この一年でリモートワークが定着し、働き方は大きく変化しました。一方で、
リアルなコミュニケーションの減少による社員のつながりやエンゲージメントの低下が多くの企業で課題となっています。今回は、人が集う場づくりを行なっている株式会社タノシナル(以下タノシナル)の福島社長にお話を伺いました。
企業の思いを詰め込んだ、
お客様と直接つながる
リアルな場づくり。
今泉
オフィスは人が集う場でもあるので、今回の対談を楽しみにしていました。オフィス同様、社名も企業の思いを伝えるものですが、タノシナルの由来について教えていただけますか。
福島
私たちの仕事をする上でのモットーは「お客様に楽しんでもらいたい。自分たちが楽しいことをしたい」です。大阪弁で「楽しくなる」ことを「楽しなるな〜」って言うのですが、語感が心地よくていい響きだなと思いタノシナルとつけました。
今泉
GMOが出社にシフトしたのは意外でした。インターネット業務はリモートワークに適した職種にも関わらず、なぜ出社を選択されたのか。オフィスメーカーであるプラスとしては大変興味深いです。
福島
前職はテレビの番組制作ですが、テレビは視聴者が何百万人いたとしてもなかなか直接リアクションを知ることができない。お客様と近くで接しながら、楽しんでもらうにはどうしたらいいか考えていくうちに、直接お客様と会える会社をつくろう、人が集えるようにお店も併設しようとなりました。
今泉
アンケート調査やSNSで反応を知ることもできますが、お客様の反応をダイレクトに受け取ることができる場があるのはいいですよね。特に、人とつながりにくくなっている今、同じ空間、時間を共有する体験価値の提供は大切ですよね。
メッセージを発信し、体感できる、
オフィスは最良のメディア。
今泉
このオフィスは銘木倉庫をリノベーションされたと伺いました。独創的な空間ですが、どのようなコンセプトで作られたのですか。
福島
コンセプトは「ショールームみたいなオフィス」です。「かっこいい」「ほかにはないワクワクする空間」が条件でした。例えば、打ち合わせに来てくださったお客様が「おしゃれだな」「素敵だな」と感じてくださり、帰る段階には依頼が決まっているような、オフィスを通して私たちがやりたいことが伝わる空間を目指しました。
今泉
なるほど、わかります。我々も「オフィスはメディア」と提言しています。オフィスとは経営者のメッセージを発信する場であり、企業のカルチャーを醸成する場です。社員はもちろんですが社外に対してもビジョンや社風が伝わることが重要だと考えています。そういった面でもCASICAからは企業文化や社長の思いが感じ取れますね。
福島
そんな風に言っていただけて嬉しいです。タノシナルのオフィスはCASICAの2階にあるのですが、イベント開催時には来店された一般のお客様もガラス越しに覗けるようになっています。「かっこいい」「ここで働きたい」なんて声を聞くと、やったーと思いますね。ここを創ってからは、魅せるオフィスだという事を理解して入社する社員も増えたように思います。今泉:社風に共鳴する仲間が集まるようになったとは、まさに、オフィスがメディアとしての役割を果たしていますね。
ルールをつくるのではなく、
オフィスに集いたくなる意義や
目的をつくる。
目的をつくることで、
人は自然と出社したくなる。
今泉
リモートワークが定着していく中でオフィス不要論も出ています。オフィスを縮小化し、固定費を節約する考えもありますが福島社長はどう思われますか?
福島
オフィスが不要とは思いません。私たちもコロナ禍で出社制限していましたが久々に出社すると皆、生き生きしていました。あと、出社日を決めるのではなく、集いたくなるイベントをつくりました。業務はリモートでも可能なので、オフィスはみんなが楽しく集う場にしようと。やはり、リアルな場でしか生まれないものってありますよね。何かハプニングが起きると面白がって人が集まったり、場が和んだりと波及効果が生まれます。
今泉
ルールをつくるのではなく、オフィスに集いたくなる意義や目的をつくる。素晴らしいですね。リモートは効率的ですが偶発的な出来事は起きません。仕事以外でコミュニケーションを積み重ねることで互いの人間性を知ることができ、自然と仲間意識が高まると思います。
エンゲージメントを高めるため、
ナレッジ共有を楽しく、徹底的に。
今泉
リモートワークによるコミュニケーションの希薄化は、社員の一体感やモチベーション低下につながると多くの企業が懸念していますがどうしたらよいとお考えですか。
福島
集いたくなるイベントづくりがまさにそうですが、その中でもナレッジ共有を徹底しました。単なる結果報告ではなく失敗も積極的に共有し、人が聞きたくなる楽しいイベントにしようと。そうすると狙い通りにイベント準備のため会社に人が集まり、自然と一体感が生まれました。オンラインでもリモートでも楽しめる企画にすることで社員も参加しやすくなり、ナレッジ共有とともにエンゲージメントも向上したと実感しています。
今泉
イベントの企画・運営を通して、エンゲージメントが高まるだけではなく、タノシナルは楽しい裏側を支える人をつくる会社なんだというメッセージが実践しながら社員にも伝わりますね。
オフィスの熱量と
オンラインの平等性、
社員の一体感を生む社内イベント。
今泉
社内イベント企画はタノシナルの事業の一つでもありますよね。とくにコロナ禍で集うことが難しくなっている今、社員の一体感、コミュケーションにつながる社内イベントはとても効果的だと思います。
福島
コロナ禍において当社が提供するオンライン社内イベントが注目されていますが、イベントは会場とオンラインのハイブリッドで行いたいというご依頼が増えました。以前は会場イベントを企画していたのですが、対象がクライアントのグループリーダーや本社メンバーなどに限られ、全社員が参加できないため、本当にメッセージが届いているのか、自分ごと化されずに士気が高まらないのではと思っていました。
今泉
会場とオンラインのハイブリッドであれば、あらゆる地域から参加できますね。ただ、リモートだと会場よりも参加しづらい印象がありますが反響はいかがでしたか?
福島
オンラインはチャットなどでトップと社員がダイレクトにつながり、リアルタイムに声が届くので、これまでよりも臨場感があったと好評です。
今泉
オンラインの方が臨場感があるとは面白いですね。確かに、リアルの場では社長に直接意見が言える機会なんてないですよね。会場の熱量を共有し、オンラインによって関係性がフラットになる。リアルとオンラインの融合によってコミュニケーションの可能性は広がりますね。
働くための場所から、
人が集い、
出会い、つながる場所へ。
今泉
「社員が集いたくなるイベントづくり」と話が出ましたが、虎ノ門にあるプラス本社もオフィスでしか出会えない「DEAI」をコンセプトに2018年にリニューアルしています。出会いには「五感・仲間・健康・志・新しい自分」の5つのテーマがあって、五感を豊かにする空間演出や導線を複雑にして他部署の人と出会えるようにするなど随所に工夫を施しました。当社も感染症対策の一環としてリモートワークを推奨してきましたが、最近では、オフィスに出社する社員も増えてきています。何かに出会うために出社する、社員にとって引力のあるオフィスにしていくために、DEAIというコンセプトをベースに、コロナ禍を経たからこそ創り出せる新たな価値を付加していかなくてはと考えています。
福島
引力のあるオフィス、いいですね。働くための場所から、人が集い、出会い、つながる場所へ。ハイブリッドワークがスタンダードになったことでオフィスの役割はますます重要になりそうですね。
今泉
今回、対談させていただく中でこれからのオフィスづくりのヒントをいただけた気がします。プラスとしては、これからも多くの企業とコミュニケーションさせていただき、製品や空間づくりに活かしてきたいと考えています。本日はどうもありがとうございました。
Guest Speaker
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福島ツトム Tsutomu Fukushima
株式会社タノシナル 代表取締役 - 20年以上テレビ業界で活躍。現在は様々な企業にインナーコミュニケーション施策を提案している。講演に「つまらないを劇的に変えるオンライン社員総会成功のポイント」がある。
- 株式会社タノシナル
- 2012年創業。大規模オンライン社内イベントを多数手掛ける。累計19万人来場の品川やきいもテラスなどオリジナルイベントも開催。2017年にはオフィスでもある複合施設CASICAを新木場にオープン。