市ヶ谷から恵比寿へ。プラスファニチャーカンパニーは、2022年11月にリニューアルオープンした恵比寿ガーデンプレイス(以降YGP)に移転しました。今回は、YGPを運営されているサッポロ不動産開発取締役の川村浩一様に、リニューアルの経緯やオフィスの在り方についてお伺いしました。
オフィス棟ではなく、あえて商業棟※へ。
「働く」の定義を捉え直してみる。
今泉
本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございます。我々の中核事業であるファニチャー事業の本部拠点の移転は弊社としても楽しみでして、社員も面白いことを発信しようという意気込みに満ちています。実は私が初めて勤めた会社がYGPにあり、個人的にも思い入れが深くご縁を感じています。
川村
そうだったのですね。若い頃どこかで会っていたかもしれませんね。私どももプラスさんに入居いただけることは楽しみです。ところで、メインは2Fの「PLUS
DESIGN CROSS」と伺っていますが、B1F、1Fにも入りますよね。どのような感じで展開されるのか今からワクワクしています。
今泉
ありがとうございます。それぞれ異なる機能を持たせており、2Fの「PLUS
DESIGN CROSS」はライブオフィス&クリエイションスペースとして、オフィス機能だけではなく他の企業様との共創やイベントスペースとしての活用も考えています。B1F「CREATORE
with PLUS」、1F「ouchi GARAGE」は家具を中心とした店舗なのですが、異なるテーマ展開にすることで、多様なお客様のワークやライフに寄り添えるように工夫しています。
川村
今は働き方も多様化していますから、いろんなアプローチが考えられそうですね。
今泉
そうですね。弊社では未来の働き方やオフィスについて議論し続けていますが、新型コロナ感染症拡大をきっかけにリモート環境が飛躍的に整い、働く場所だけではなく、働き方そのものが多様化していると実感しています。100人いれば100通りの働き方があり、オフィスも100通り存在するべきだと。そう考えていた時期にYGPしかもオフィスのあるタワー棟ではなく商業棟でのご提案を頂き「これだ!」と、我々が考える新しいオフィスを発信する場になると感じました。
※商業棟(新名称:センタープラザ)
人や街とゆるやかにつながる、
開かれたオフィスという考え方。
今泉
商業棟をご提案いただいた時は驚きもありました。オフィス空間へシフトする経緯は何だったのでしょうか。
川村
YGPも1994年の開業から30年近く経ち、お客様の消費行動の変化とともに新たな方向性を模索していました。そのような中での百貨店の退店は転機となりました。YGPの開業が恵比寿の街に付加価値をもたらし、広域からの集客、街の成長に貢献してきたことは誇りでもあります。一方で、近隣住民の方に還元できているのか、働き方が多様化する中でタワー棟のような大規模オフィスだけで良いのかという疑問もありました。近隣住民やオフィスワーカーをメインターゲットとして捉え直した時、商業棟であれば小規模オフィスも可能ですし、オフィスを出ればすぐに買い物や飲食ができ、気軽に遊びにもいける。オフィスと店、街とがゆるやかにつながれるのがいいなと思いました。
今泉
人や街に開かれた場所という考え方はこれからのオフィスにとって重要です。新型コロナ感染症で生活様式が変わり、家とオフィス、生活と仕事の境界は曖昧になってきました。ワークとライフが混在すると考えた時、住環境にあるYGP、個人との接点が生まれやすい商業棟は理想的です。
川村
恵比寿の街って色んな顔があるんですよね。住むこともできるし、遊ぶこともできる、もちろん働く場所でもある。それらが混ざり合って共存するところが恵比寿の街の魅力かもしれませんね。
人が自然と集う引力のある場所。
オフィスづくりとまちづくりは共鳴する。
地域住民の人々とつながり、
街とともに成長するオフィス。
今泉
YGPに弊社が入ることで期待されていることはありますか。
川村
YGPでは「ライフクリエイターズ」を新たなメインターゲットとしています。これからはモノよりもコト、提案型のサービスが重要かと思いますので、我々が予想もしないユニークなアイデアを楽しみにしています。
今泉
そこは我々も意識していまして、百貨店の名残のあるオフィスらしくない空間ですので意外性を持たせたいなと。中央の開放的な空間ではイベントや他のテナント様との共創企画も考えています。お買い物に来られた方々も気軽に参加いただけて、子どもたちも遊びたくなるような企画にも挑戦し、地域の人々とのつながりが生まれる場所にしたいですね。
川村
オフィス空間でありながら一般の方も利用できたら面白いですね。
今泉
せっかくYGPに入るのですから、率先して新しいオフィス像を描きたいと思っています。「これオフィスなの?」と言われながらも10年後には当たり前になっているような、働き方の価値観を変えるオフィス空間を目指しています。
川村
子ども視点といえば、御社は子どもや学生を対象とした文具製品も展開されていますね。
今泉
はい。弊社にはステーショナリー事業もあります。文具や家具は教育分野とも相性がよくYGPのコンセプト「育む」とも重なると思います。この地を20年、30年とプラスブランドの本拠地と捉え、モノを売るだけではなく街とともに成長するオフィスでありたいです。
川村
私どももリニューアルにあたり近隣の方とお話させていただく中で、子育て世帯にフォーカスしました。恵比寿=大人の街というイメージですが、街の将来を考えると子どもも楽しめる次の世代が根付く街にしていきたいです。
今泉
1Fの「おうちガラージ」では在宅ワークのデスクまわりの備品や文房具も揃えていますので、お子さまも一緒にご家族で足を運んでほしいですね。
恵比寿の街の活性化につながる、
新しい取り組み、共創を。
今泉
御社はYGP以外にも恵比寿の街全体の活性化に取り組まれていますよね。
川村
はい。我々の会社は約140年の歴史があります。恵比寿ビールを工場から運ぶための線路を引いたことで駅名となり、街の名前になった経緯がありますので、恵比寿の街と一体で考えることは責務だと考えています。YGPで完結するのではなく、街へ出て地域住民の方とつながり触れ合っていくことも重要です。その取り組みの一つが南一公園のリニューアルであり、スタートアップ企業をターゲットとしたオフィスビル「Sreed
EBISU+t」の運営です。それらを拠点とした街の活性化も期待しているので、その際には力をお借りしたいです。
今泉
こちらこそ、我々にとっても新しいお客様と出会える良い機会だと捉えています。「Sreed
EBISU+t」には備え付け家具があるので、入居される方には家具を買う発想がないですよね。そういったサブスク世代がオフィスを借りている間だけ家具も借りて使うことは新たな視点でもあり、共創できることに可能性を感じています。
オフィスにも、街にも。
必要なのは、集いたくなる引力。
今泉
我々はオフィスを考える上で「引力」という言葉を大切にしています。ただ、引力は家具だけで実現できるわけではなく、他社との共創やコミュニケーションツール、人事制度などさまざまな要素からなります。
川村
引き寄せられて、自然と人が集まる。行きたいという気持ちが湧き上がるオフィス。引力って、いい言葉ですね。新型コロナ感染症で働き方が10年進んだと言われますが、人間の本質って簡単には変わらないですよね。誰かと話したい、会いたい、だからオフィスに行こうと。アイデアやイノベーションは雑談から生まれることもありますしね。
今泉
その通りです。家でワークをして、オフィスは人と会うため、リラックスするためでもいいんです。他にも僕らが大事だと考えているのが高揚感です。一緒に作り上げた達成感や喜び、その熱量を同じ空間で共有することで人との距離が縮まり、結びつきは強くなる。「PLUS
DESIGN CROSS」では、人と人が出会い、つながり、交流する場でありたいと考えています。
川村
そういった意味では、街づくりも同じですね。人が自然と集いたくなるコトがあり、リアルにつながることで街が活性化する、引力のある場づくりが重要です。
今泉
人が自然と集う引力のある場所。オフィスづくりとまちづくりは共鳴する部分が多いですね。いつまでも話が尽きません。これから一緒に取り組めることが益々楽しみです。本日はお忙しい中ありがとうございました。
Guest Speaker
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川村浩一 Koichi Kawamura
サッポロ不動産開発株式会社
取締役執行役員 恵比寿事業本部長 - 1989年サッポロビール株式会社入社、2020年サッポロ不動産開発株式会社取締役執行委員、2021年恵比寿事業本部部長に就任し、恵比寿ガーデンプレイスをはじめ恵比寿のまちづくりに携わる。
- サッポロ不動産開発株式会社
- 1988年サッポロ不動産開発株式会社設立。1994年に恵比寿ガーデンプレイスを開業し、2022年11月8日に“ライフクリエイターズリビング”をリニューアルコンセプトとして、商業棟をセンタープラザとしてオープン。