オフィスから、未来へ繋げる木材活用プロジェクト「MOKURAL」、始動。
カーボンニュートラル実現を目指して環境問題の視点から、さらには、オフィスで働く人々の
心身の健康という観点からも、今、オフィスの木質化の機運が高まっています。
プラスでは、国産材の積極的な活用によって人と地球のwell-beingを目指しています。
メーカーとしてSTEP1から取り組むということ
2020年、環境対策の一つとして日本政府は「カーボンニュートラル」を宣言。
2050年までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」*から、
植林、森林管理などによる「吸収量」*を差し引いた合計を実質的にゼロにすることが目標として掲げられました。
*人為的なもの
放置林の針葉樹を活用した、
木製オフィスファニチャーの製作を推進。
プラスでは、2022年1月、木材循環システム構築によるカーボンニュートラル実現を目的として、木材活用プロジェクト「MOKURAL」を立ち上げました。このプロジェクトでは、若齢期を過ぎた国内の針葉樹を適切に伐採してオフィス家具の資材として活用し、伐採した箇所にCO2吸収能力の高い若木を植樹することでCO2削減の推進、森林の健全化への貢献を目指しています。木材の中でも国産材を利用することで、輸入材と比べて輸送距離を大幅に短縮でき、物流時のCO2排出量の削減につながります。また、木材は光合成によって大気中のCO2を吸収しますが、若齢期が過ぎるとCO2吸収力が低下するため、放置林の木を伐採、活用し、若木を植樹することで日本の森林のCO2吸収力が高まります。
各地域での伐採、活用を行い、
エリアごとの木材循環ストーリーを。
プラスは、協同組合福岡・大川家具工業会地域材開発部会が主催する「センダンサイクル」プロジェクトに参画し、針葉樹の杉やヒノキを伐採した箇所に早生樹広葉樹センダンを植樹する取り組みをスタートしました。成長の早いセンダンは20年〜30年で家具材として利用が可能であり、家具の資材には不向きとされる杉やひのきと比べても硬質で加工のしやすさが魅力です。以前は、激しく枝分かれし曲がって育つセンダンは家具材として用いられませんでしたが、近年の育成管理技術開発により通直材としての成長も可能となり、家具の資材としての活用が始まっています。
「センダンサイクル」のような木材循環システムが全国で展開され、各地域で放置林の伐採・整備、そして日本の各地域環境に適した木材(地域材)を用いて地場の家具工場での生産が可能になれば、さらなるCO2削減につながります。プラスでは、針葉樹の活用を推進するために、柔らかくて傷がつきやすい針葉樹の課題解決の一助となるような針葉樹用塗料の開発にも取り組んでいます。カーボンニュートラルにつながるビジネスモデルとして、エリアごとの木材活用プロジェクト「MOKRAL」を全国に展開し、地産地消を目指しています。
持続可能な
木材循環システムには、
立場を超えた共創が
欠かせない。
メーカーとして木材循環システムを構築するために、木の産地や製材の工程、まずは、木材の循環を把握すること。
「センダンサイクル」プロジェクトを主催する協同組合 福岡・大川家具工業会
地域材開発部会の植木正明さん、森田英友さんを訪ねました。
左上:株式会社ウエキ産業 右上:福岡県八女森林組合 左下:福岡県八女市 杉の管理人工林 右下:森田氏とご子息の英良君
左上:株式会社ウエキ産業 右上:福岡県八女森林組合 左下:福岡県八女市 杉の管理人工林 右下:森田氏とご子息の英良君
そもそもなぜセンダンに着目して、
植樹を始めることになったのですか。
植木氏
センダンは昔から日本でも使われてはいたが、自然木は低い位置で分岐して幹曲がりが激しいばってん、加工するには不向きだったわけ。けれど、熊本県林業研究・研修センターで、植えて2、3年目に芽かきすればまっすぐ育つことが実証されたわけさ。大川家具では過去にセンダンを扱った経験があってケヤキに似て硬質なことや20年ぐらいで成長することは知っておったけん、自然木を使いながら啓蒙している間に植林したセンダンも成長して、これからの家具材として期待できると着目したわけよ。だから大川家具工業会に入会して、地域材開発部会も立ち上げてもろて、「山で放置されている杉、ヒノキは俺たちが買うけん、センダン植えんねん」と啓蒙活動をしているわけよ。
ばってん、センダンは広葉樹に着目してもらう手段であって、本当の目的は放置された杉やヒノキの活用なわけ。我々は、杉やヒノキを活用するために造作用の薄いCLT*の開発もしていて、これまでは36ミリ以上の厚い構造用しかなかったけん、薄いCLTで家具や天板、棚なども作っていこうと考えているところ。プラスさんは針葉樹用の塗料も開発していると聞いてます。センダンだけじゃなく、ぜひ、杉やヒノキの活用にも協力願いたいね。
*CLT:Cross Laminated
Timber(直交集成板)。木材を縦と横に交互に重ねた分厚いパネル。新しい木質構造用材料として中高層の鉄筋コンクリート造に替わるなど注目を集めている。
プラスのプロジェクトへの参画で、
期待していることはありますか。
森田氏
(協)福岡・大川家具工業会では「センダンサイクル」プロジェクトの一環として、2018年から放置された杉やヒノキを伐採してセンダンの植樹を行なっていますが、自分たちだけで活動するのではなく、さまざまな人、関係者を巻き込みたいと考えていました。特に、伐採からプロダクトに至るまでの背景、ストーリーを発信する上では、プラスのようなオフィスメーカーに山の現場から知ってもらうことは重要だと考えています。オフィスは働く場所であり、皆が集まる、社会人の学校のような場所だと思うので、そのオフィスで国産材のオフィス家具が使われることは啓蒙活動の場として最適です。林業の現場や板の製材所、家具工場はこれまで分断されていたため、我々も互いを理解できていませんでした。今回、このプロジェクトを通して川上から川下をつなぎ、分断されていた木材のサプライチェーンを理解できたことはとても収穫でした。
社会的にはSDGsが謳われていますが、オフィスの木質化によって、まずは植樹や山の現状を知ってもらうこと。僕たちは家具を通じて持続可能な社会の実現に貢献できればと思っています。今はまだ植樹や国産材がキーワードとして挙げられますが、息子が大人になる頃には家具業界では当たり前として捉えられるようにプロジェクトを推進していきたいですね。
Profile
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植木正明 Masaaki Ueki
植木林業株式会社 代表取締役 - 兼株式会社ウエキ産業会長(SDGs事業認定企業)、(協)福岡・大川家具工業会地域材開発部会組合員
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森田英友 Hidetomo Morita
手作り家具工房日本の匠株式会社 代表取締役 - 2002年株式会社イースト入社(食器棚の製造メーカー)、2007年手作り家具工房日本の匠株式会社立ち上げ(ネット通販会社)
使い続けることで
パフォーマンスが高まる。
木は、最高の仕事家具になる。
プロダクトデザイナー 清水慶太氏
デザイナー、デザインコンサルタント株式会社クリエイティブノルム代表取締役、
デプスデザイン株式会社代表取締役東京藝術大学非常勤講師、女子美術大学非常勤講師、moreTrees賛同人。
VicendaSeriesのコンセプト、
デザイン特性について教えてください。
Vicendaにはイタリア語で「お互い」の意味があります。今回、木と金属を組み合わせたいという依頼を受け、構造上の弱点を補い合いながら互いの良さを引き出すことを目指しました。例えば、金属は強度があるが塊として使用すると重量が出てしまう。一方で、木は金属ほど重くなくて使いやすいが家庭的な雰囲気が強くなってしまい、オフィス空間や働くマインドとのズレが生じてしまいます。温もり感のある木とスタイリッシュな金属の組み合わせは、視覚的にも働く人の心身に与えるバランスがよいと考えました。
オフィスにおける、
木質家具の魅力とはなんでしょうか。
職人のパフォーマンスが道具で左右されるように、働く人にとってオフィス家具は道具だと思うんです。使う人の感性が磨かれ、ポテンシャルが高まる、使うことで前向きな気持ちになってくれたらなと思います。特に、木は使うほどに味わいが深くなり愛着も湧くので仕事家具としては最適だと思います。
今回のテーブルは、働く人の道具、執務デスクなので連結仕様にしました。構造上、木での連結は難しいため今まで木製テーブルにはありませんでしたが脚を金属にしたことで実現できました。機能面はスチール家具と変わらないのでオフィスにも導入しやすいと思います。
上:VicendaSeries第一弾のデスクは2022年1月から販売スタート。7月にはチェアの発売を予定している。 右上:スタート時からのアイデアスケッチが時系列に並べられたパネル。スケッチの1枚目には、すでに「WOOD×STEEL」の文字がある。ここを起点にさまざまなアイデアが展開されていた。
センダンを使ってみていかがでしたか?
これまでもさまざまな木材を使って家具を製作してきましたが、センダンは知りませんでした。第一印象は、とにかく木目が強烈でした。木目の強い木は一歩間違えると和風になってしまうためデザインは慎重に行いました。ただ、その木目が個性でもあるので全面的に出して魅力を伝えたいと考えました。センダンはわりと硬質で杉ほど柔らかくないため、家づくりに活用できると思います。
木質家具や間伐材を使用した
製品が多いのはなぜですか?
デザイナーとして0から1を生み出す上で、作り出すものは世の中のためになる、人に喜んでもらえるものでありたいと考えています。2006年にミラノから帰国したのですが、その時に日本の森林問題を知り、森林環境保全団体moreTreesにも参画しています。間伐材を積極的に利用することは、エコロジーとエコノミー、両方につながるため、今後も積極的に木を利用し、発信し続けたいと考えています。
センダンサイクルプロジェクトに、期待することはありますか?
地域材での制作依頼を頂いた時、「また間伐材の杉かな」と思っていたので着眼点が面白いなと思いました。植林された人工杉の積極利用は大事ですが、杉は建築材を目的に植林されたため家具材として最適というわけでもないんです。柔らかいので家具材として利用する際は圧縮加工が必要な場合もあります。まっすぐに育ったセンダンを安定供給されることで、センダンは家具に、杉は建築の資材として、将来的に国産材の活用が常識になっていくといいですね。